外見の美しさだけでなく、心や身体の中からお客様を美しくする
美容のトータルプロデューサー土屋雅之さん
2020/02/25 Beauty

株式会社ゾーエ代表取締役 土屋雅之さん 美容師としてスタートした後にメイクを学び、トータルプロデュースするヘアーコンシェルジュサロン「Aio-N GINZA」を運営している土屋雅之さん。美容家として外見でなく、内側からキレイにすることでお客様を美しくしている土屋さんに、美容家としての考えや美容業界への思い、今後のビジョンなどについてインタビューさせていただきました。
この記事のINDEX
美容師のみなさんへ「美容家を目指してほしい!」
――美容家として活動する前は、美容師としてどのようなキャリアを積まれてこられたのですか?
土屋 美容師としてのスタートは、岐阜県にある寮制の美容室で美容学校の通信課程と連携している会社でした。私は美容師を志したときから「5年で自分のお店を持つ」ことを目標にしていました。「3年で技術を習得して2年で経営学を学ぶ」ことを決めていたので、3年間は夜中までひたすら練習したんです。その結果、4年目で店長になることができましたが、若くして店長になったので会議などで発言をしても聞いてもらえないことが多く、それがすごく悔しかったんですね。そこで、どうしたら私の意見を聞いてもらえるようになるのか考えました。
当時コンクールがあり、そこで優勝すると全国で講師ができるような先生になれたんですね。そこで5年で独立するという目標を、コンクールで優勝してから独立しようと方針転換したんです。6年目に全国優勝して、日本代表として世界大会へ出場。メダルも獲得しました。ただ、世界大会ではヘアだけでなくメイクも必要で、髪型は上手くできたのにメイクは基本的なことしかできなかったことが心残りで、もっと勉強したいと思ってメイクの先生を探して習い始めたんです。
――そこでメイクを学んだことが美容家としての礎となったのですね。
土屋 そうですね。メイク技術を1年で極めたいと思い、サロンが休みの日に先生のところに通いながら毎日メイクの練習をしました。そして、約1年で自分が納得できる技術を身に付けることができました。
そのタイミングで独立しようと思ったのですが、社長から名古屋にトップブランドのサロンを作りたいから、総責任者をやってもらえないかと言われたんです。そのサロンが私のイメージしていた将来の計画に合致していたので、これは運命だと思ってブランディングの総責任者を引き受けることにしたんです。
トータルコーディネイトを意識したことが美容家としてのスタート
――ヘアやメイクなどトータルプロデュースする美容家として活動するようになったキッカケを教えてください。
土屋 名古屋のサロンが大盛況で話題になり、1年も経たずに東京・南青山に小さいお店を出したんです。そのときに私が考案した「名古屋巻き」が雑誌などで取り上げられて話題となり、お客様が増えたので新しく東京にビルを借りて、3階部分に私のプライベートサロンを作ってもらいました。独立という形ではありませんでしたが、自分専用のサロンを持つことができたんです。
そのタイミングで、ヘアメイクをやりたいというメンバーが集まり、女優さんやモデルさんのヘアメイクの依頼が入るようになったんです。ただ、女優さんの場合は、一般のお客様と違い、例えば「今度、この衣装でこういう雰囲気の役をするんだけど、それに合うヘアメイクをしてほしい」というオーダーに対し、私たちがイメージしてヘアやメイクなどをトータルでコーディネートするわけです。そこでトータルコーディネイトを意識するようになったことが美容家としてのスタートです。

――トータルプロデュースという考え方が、美容家としての活動に繋がったのですね。
土屋 はい。美容師さんは、頭や顔だけを見て髪の毛をうまくデザインしますが、本当は服などいろいろなものから、その方の雰囲気というものを演出するのが、私たち美容師の仕事だと思っています。美容師はカットだけすればいい、メイクアップアーティストはメイクだけすればいいというわけではなく、全身を見ることがすごく大事なんです。全体の雰囲気を見て、ヘアをどう仕上げるか考える方が正しいと思うんです。美容師こそトータルプロデュースをやるべきなんですよ。
美容家と名乗るようになったのは、この私の考えをきちんと伝えたいという思いからです。いろいろな講演に呼ばれるようになって、トータルプロデュースという話をさせていただくのですが、美容師・土屋雅之として講演すると、ヘアカットのスペシャリストの人って思われるんですよね。ですから、私が伝えたいことと、聞かれることがズレてしまうんです。そこで、トータルプロデュースのことを伝えるなら美容家と名乗った方が良いと思ったんですよ。
美容家なら、ヘアのこともメイクのことも洋服のことも分かっていて、私が本当に伝えたいことが伝わるとことに気が付いたんです。本来、美容師も美容家という意識を持って、トータルプロデュースを考えながらヘアスタイルを全体の一部と認識してアドバイスすることが、本物の美容師だと思います。さらに言うと、美容師からオーナーになった後に美容家を目指すという流れを作って、美容家という立ち位置を美容業界に作りたいと考えています。そのためにDMM.comで「美容家・土屋雅之オンラインサロン」もスタートしました。美容家を目指す方は必見です。
「美と健康」ではなく「健康と美」
――土屋さんの中では、「美容師=トータルプロデュース」というのが当たり前なんですね。
土屋 そうなんですよ。ですから、私の中ではその先も考えています。お客様からヘアのことだけでなく、例えば肌のことや体調のことなど、ライフスタイルまで質問してもらえるようにしたいんです。HPにも書いてありますが、「美と健康」ではなく「健康と美」。つまり、外見だけでなく身体の中からキレイになることが、本当の美に繋がると考えています。
メイクの際に化粧品を肌に合わせようとするのですが、やはり限界があります。もともとの肌の状態は、身体の中から変えないと治らないんです。そう思い始めてから身体の中に興味が湧きだして、現在勉強しています。美容室で髪の毛をデザインするのは当たり前で、それ以前に髪質や肌など中身の悩み、あるいは心理的な悩みまで聞けるチャンスが、美容室にはいっぱいあるんですよ。
――ヘアーセラピーサロン「Aio-N GINZA」は、そういう着想から生まれたのですね。
土屋 はい。美容サロンとはケアサロンなんだということに気付いて、理想のケアサロンを作りたいという思いから10年前に独立しました。最初は「ヘアーセラピーサロン」というものを考え、髪の毛から内面的なことまでの悩みを解決するセラピストのようなことをやろうと思ったんです。私は美容師が「究極のカウンセラー」だと思っているんですよ。だからこそカウンセリングにとてもこだわっていて、特に新規のお客様には、「この方に一生髪の毛を触ってもらいたい」と思ってもらうためには、最初のカウンセリングが勝負だと思っています。

ヘア―セラピーサロン「Aio-N GINZA」の店内。ヘア・カラー・ケアなど専門のコンシェルジュが外見だけでなく、
内面からキレイにしてくれます。
――具体的に、どのようなカウンセリングを行うのですか?
土屋 美容室に行くと、「どんなヘアスタイルにしたいですか?」と聞かれると思いますが私は「今どんな気分になりたいですか?」とか「一人の女性として、色っぽいとかカワイイとかどんな雰囲気やムードを足したいですか?」といった、内面的な部分を先に聞きます。それを理解した上で、髪型やメイクを決めるんです。
――美しさは外見だけなく、心や中身も大事なんですね。
土屋 はい。ネガティブなことも、その人のポジティブな個性なんですと助言できるのが美容師なので、「究極のカウンセラー」だということに気付いたんです。それが今の美容家の活動に繋がっているんですよ。美容師一人ひとりが美容家という意識を持ってお客様と接することが大事なんです。
――土屋さんは商品開発もされていますが、コンセプトについて教えてください。
土屋 美容室でキレイになるのは当たり前です。次の日から自分で同じスタイルをできるようアドバイスする場所が美容室だと思っています。ホットカラーなどもそうですが、「お客様がご自身で美容室よりキレイにできるようにするための商品」というのがコンセプトですね。ですからプロが使うための商品ではなく、一般のお客様が使いやすくて自分でやっても美容室と同じようにできる商品を開発しています。
全国の美容室に健康カウンセラーを配置したい
――今後の美容業界について、取り組んでいこうと思っていることを教えてください。
土屋 サロンに「健康カウンセラー」を配置したいと思っています。アトピーなどいろいろな体調の悩みを持っている方に、きちんとアドバイスできるコンシェルジュを配置するイメージです。実際に漢方など勉強している美容師に入ってもらったとき、アドバイスする姿を見て「これは美容室の未来だな」と感じました。全国の美容室に、こういう健康カウンセラーがいたら素晴らしいだろうなと思っています。美容師が医療従事者などから知識を教えて頂いて身に付ければ、病気になる人を減らせると思うので、ぜひ取り組んでいきたいですね。そして美容業界はこういうことができるんだということを他業界に伝えるために、2019年3月に「ヘルスコンシェルジュアカデミー」を設立し、認定制度もスタートしました。美容業界に「美容家やヘルスコンシェルジュ」のように、意識や志の高い方が増えることで、業界全体が発展すると信じています。

株式会社ゾーエ
代表取締役
美容家
土屋雅之さん
髪の専門家として在籍。数々のコンクールで優勝実績を持ち、大型美容グループの総責任者、及びブランディングを担当。2000年に「名古屋巻き」を考案し、全国で一大ブームとなった巻き髪スタイルの火付け役に。その後、メディア、雑誌等にレギュラーとして多数出演するほか、企業のコンサルティング、商品開発アドバイザーとしても数多くの実績を上げる。2009年9月、美容室の常識を変えるヘアーセラピーサロン「Aio-N GINZA」をオープン。2019年3月に「ヘルスコンシェルジュアカデミー」を設立。2019年11月「美容家・土屋雅之オンラインサロン」DMM.com配信スタート。サロンワークのほか、美容家として「美容産業が日本経済を豊かにする」をテーマに講演を行うなど、精力的に活動している。

株式会社ゾーエ
東京都中央区銀座3-4-17 OPTICA 9F
TEL:03-3562-8632
http://www.zoe-enterprise.com/
http://www.aio-n.com/ (Aio-N GINZA)
撮影:坂本 康太郎
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