お客様が快適に過ごせるために、各地域の特徴を活かした養生プログラムを作りたい
星野リゾートのスパプログラムを一から作り上げた渡邉径子さん
2020/02/12 Spa

星野リゾート オペレーションマネジメントグループ Spa & Wellnessマネジャー 渡邉径子さん 全国各地にリゾートホテルや温泉旅館などを展開する星野リゾートには、各地域の特徴を活かした独自のプログラムがあり、お客様から大好評を得ています。そんなスパプログラムを統括しているのが、オペレーションマネジメントグループ Spa & Wellnessマネジャーの渡邉径子さんです。今回は、星野リゾートのスパプログラムのコンセプトや「星のや東京」の養生プログラム、今後の展開などについて渡邉さんにインタビューさせていただきました。
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星のやのスパプログラムのベースは、養生の元となる「調身・調息・調心」
――現在、Spa & Wellnessマネジャーとして、星野リゾートのウェルネスプログラム全体を統括されていますが、最初からスパプログラムに関わる仕事をされていたのですか?
渡邉 私が美容の世界に入ったのは40歳頃ですが、それ以前は主にフランスと日本を行き来するような別の仕事をしていました。日本側の取引先の一つだった美容院チェーンからの依頼で、特にフランスのスパやエステ事情も見て回っていました。また、アロマセラピーにも興味があって勉強していたので、少しずつ仕事内容が美容方面へシフトしていきました。
私が星野リゾートに入社したときは、「星のや軽井沢」がオープンする前でしたので、まだスパをほとんど展開していない状態でした。初めて自社のスパができたのは、「リゾナーレ八ヶ岳(当時 小淵沢)」で、現在のVINO SPA(当時「リラクゼーション プレイス」)です。ですから、星野リゾートのスパプログラムには、スタート時から携わってきました。


星野リゾートで初めてスパ(VINO SPA)ができたリゾナーレ八ヶ岳
――星野リゾートのスパプログラムは、どのようなコンセプトでスタートされたのですか?
渡邉 「星のや軽井沢」の開業時から、ようやくきちんとしたスパという考えになってコンセプト作りに取り掛かりました。最初は禅の言葉からいろいろなコンセプトを探していて、星のやにご滞在いただいて心身を調えていく、そんなスパにしたいと考えたのです。禅の世界には、「調身・調息・調心」の3つがあり、すべてがきちんとできて初めて禅が組めるという教えがあります。日常の忙しい生活の中でひと呼吸おいて、心と身体と呼吸をきちんと調えることで、明日への元気な一歩に繋げてほしいという思いでスタートしました。今でもこれは星のやのスパの中でコアにある部分だと思います。
非日常を感じてもらうための様々なプログラム
――星野リゾートでは、各ホテルによってプログラムが異なりますが、コンセプトや内容は、ホテル毎に考えているのですか?
渡邉 通年で行うプログラムは、私も一緒に関わって作っています。その他に季節毎で現地のスタッフからいろいろなアイデアが出るので、その方向性を整理しながら作っていく作業をしています。その場所の地域性を大切にしながら、その土地ならではの空気みたいなものを感じていただけるように心掛けていますね。圧倒的な非日常感が求められる星のやにとって、そこはとても大切なことだと考えています。
――スパの中で非日常感というのを演出するのは難しいと思いますが、どのようにされているのですか?
渡邉 星のやのスパは、恐らく多くの方が日常的に通ってらっしゃるスパとは、マッサージやトリートメント後に受ける感覚が違っているところが非日常感だと思っています。私たちは決して痛いこと、強いことはしません。しかし終わった後に、なんだか身体が軽くなっていて、そのまま部屋に戻ってぐっすり眠り、翌朝とても軽やかな気持ちと心で目覚めるようなところを目指しています。街中にあるスパに普通に行ってそのまま眠りたいと思ってもそれはできませんよね。星のやでは、とにかくゆっくりとお寛ぎいただくためにトリートメントメニューを作っているので、そういう意味ではスパの考え方や作り方が違うのです。
養生のプログラムの中の大事な要素の一つがスパトリートメント
――今では、いろいろなホテルがスパを行っていますが、どのように差別化を図っているのでしょうか?
渡邉 一つは、各土地ならではのものを活かし、とにかくリゾートで寛いでいただくことを一番の目的として作っています。
また、スパが単体としてあるのではなく、滞在プログラムの中の客室や食事、温泉、睡眠などもすべて含めたものが星のやのスパなのです。いろいろなプログラムを作っていますが、例えば「星のや富士」にスパはありませんが、養生系のプログラムがあります。つまり心身に対して働きかけるようなものならば、それもスパであると考えているのです。ですから私たちが提案するのは「養生」なのです。養生プログラムの中の大事な要素の一つがスパトリートメントであると考えています。

一泊二日でグランピング体験ができる「星のや富士」。
――今お話にあったように、スパの大切な要素の一つに食事がありますが、スパの中の食事というのをどのように捉えていますか?
渡邉 食事は身体を調える大切な要素です。上手にゆったりリラックスすることで、副交感神経が少しずつ優位になってきて良いバランスが取れるようになります。そうすると、本当に素材を大切にした食の微妙な味わいが分かるようになるのです。寛いだ状態で、素材の味や匂い、色などを、五感を駆使して楽しんでいただける食をご提供したいと考えています。また、各ホテルがある土地でとれた旬のものを使って、地域性をどう表現するのかも大切なコンセプトの一つです。
――食事同様、大切な要素の一つである睡眠についてはどのようにお考えですか?
渡邉 眠りというのは、ただ長く眠れば良いというわけではありません。お客様が目覚めたときに、さわやかに一日を過ごせるような眠りを味わっていただきたいと思っています。そのためには眠りの「質」を高めることが大切なので、例えば、温泉の温度は40℃程度に設定しています。10分ほど入っていただくと、深部体温が0.5から1℃くらい上がるということが分かっています。また、40℃以下の温度なら副交感神経が優位になっていき、お風呂から上がって少し深部体温が下がり始める頃にちょうど眠たくなってくるんですよ。ですから、例えば12時に寝るなら10時頃からゆっくり肩まで浸かって温まり、出て1時間ほど経つと少しずつ眠たくなってくるように仕掛けています。じっくりと神経から心も身体も緩めていって休める方向に持って行くように考えています。


「星のや東京」の最上階にある温泉。手前は内湯、奥は露天風呂になっていて、
東京の空を眺めながらゆっくり浸かることができます。
――食事や睡眠なども、プログラムの一部として細かなところまで考えられているのですね。
渡邉 はい。ですから、星のや全体として成立させるために、他部署との協力体制が必須になります。それは、自社で行っているからこそできることだと思っています。
お客様の意見を反映させながら、心身を調えていけるようなプログラムを作る
――通年プログラムの他に、季節毎のプログラムもありますが、こちらは毎年内容が変わるのでしょうか?
渡邉 少しずつブラッシュアップしていく感じですね。各地域のスパスタッフも含めながら、かなり活発な会議を行っています。常に、次の季節にどんなものを提案しようか考えています。
プログラムの企画は1年以上前から練り始め、会議を通して少しずつ内容を構成していくので、少なくとも半年前には完全に出来上がっている状態です。リリースは1年前で、実際に始まる前まで細かい部分を詰めていきます。さらにリリースとして出来上がったものの他に、細かな作り込みやオペレーションの見直しなどの作業も入ります。
――実際にプログラムを利用されたお客様からもいろいろな意見や要望があると思いますが、プログラムに反映されることもあるのでしょうか?
渡邉 お客様からの意見や要望は、すぐに取り入れるというよりも、先々にどう活かしていくかという形で反映させています。ただ、実際にプログラムをスタートする前にトライアルで受けていただいたときの意見については出来るだけ早く反映させるようにしています。
例えば、「星のや東京」の深呼吸養生プログラムにはベッドの上に大きな抱き枕や数種類の枕が用意されるのですが、眠れない、良い眠りが得られないなど、お客様によっては不要だという意見があり、お好みのものをお客様に選んでいただくようにしました。

良い睡眠がとれるように、さまざまな枕を用意しています。
――現在のSpa & Wellnessマネジャーという立場で、渡邉さんがもっとも重視していることは何ですか?
渡邉 そのプログラムが養生の元となる「調身・調息・調心」に立脚しているのかどうかですね。非日常的なことへのチャレンジが、ちょっとしたショック療法のように繋がるやり方もあると思っています。ですから、最終的にきちんと心身を調えていけるような内容のプログラムを作れると良いなと考えています。
例えば、もともとスパプログラムとして作ってはいませんが、養生として面白いと思っているのが「星のや富士」の富士登山プログラム「グラマラス富士登山」です。昔からある信仰のための登山道を、「六根清浄」と唱えながら登るのです。この「六根清浄」は、視覚や聴覚、嗅覚などを清く浄化するため、昔の人が唱えながら祈るような気持ちで富士山に登っていた言葉です。いわゆる現代の富士登山とは全く違うアプローチなので、心に響いてくるものがあると思います。大変さもありますが、心がスッキリする、これも大切な養生だと思っています。

2017年から毎年開催している「星のや富士」のグラマラス富士登山。
写真提供_(株)合力
――スパとはこういうものだという固定概念ではなく、養生という部分に重点を置いているから、いろいろなプログラムのアイデアが出てくるんですね。
渡邉 そうですね。おそらくトリートメントルームの中でどんなトリートメントをしようとか、どういう化粧品を使おうと考えるよりも、いかにして身体と心をきれいに入れ替えるのか、そして普段とは違うところに持って行くというところが大事なのだと思います。

星野リゾート
オペレーションマネジメントグループ Spa & Wellnessマネジャー
渡邉径子さん
CIDESCO 認定エステティシャン 、同アロマセラピスト、 同スパセラピスト、IFA認定アロマセラピスト、日本エステティック協会永久認定トータルエステティックアドバイザー、同協会認定講師、温泉利用指導者、温泉療養指導士、バルネオスペシャリスト、温泉ソムリエマスター
2004年より星野リゾートグループ各スパのプロデュース、スタッフ教育、ウェルネス系アクティビティ開発、スパ滞在プログラム開発、グループ内温泉関連プログラム全般の開発に携わる。
星のや東京の「スパプログラム深呼吸養生」を体験した
mireka(中島 未麗歌)さん
今回、「深呼吸養生」を体験させていだいて、とても贅沢な時間を過ごすことができました。さまざまなプログラムを体験させていただいた中で、私の中で印象に残っているのが「香りのブレンド体験」と「ボディリメイク」です。
もともと、香水やボディフレグランスなど香りのものが好きなのですが、「香りのブレンド体験」でのアロマ作りを通して、アロマセラピーの検定を受けたい、もっと美容の幅を広げたいと思ったぐらい刺激を受けました。「ボディリメイク」に関しても、プロの方からアドバイスを頂いて自分の身体の状態をより深く知ることができたので、その後の日常生活にも活かしています。
また、食事の素晴らしさにも感動しました。特に、30種類以上の季節の野菜を使ったオリジナルランチは、彩りも味も食感もすべて楽しむことができました。普段は一度にこれだけの量の野菜を食べる機会がないので野菜に対する考え方が変わりましたし、野菜の奥深さを学ぶことができました。自分で料理をするときにも参考にしたいと思います。
星野リゾート様ではホテルごとにさまざまなプログラムがあるので、自分へのご褒美として他のスパプログラムも体験したいと思いました。ホテルのスパは女性が受けるイメージがありますが、星野リゾート様のスパプログラムは男性の方も満足できると思いますので、ご夫婦やカップルで体験されてみるのもいいと思います。

フリーランスモデル
mireka(中島 未麗歌)
2015年にサロンモデルをきっかけにモデル活動を始める。その後、2017年に美容メディアKALOSのモデルとして動画に出演。現在は活動の幅を広げ、ORICON NEWSランキュイーンのキャスターとしても活躍。SNSはinstagram、Twitterを主に、美容に関する事柄や自身のファッションについてなど、仕事以外の情報発信も行っている。最近は資格取得にも力を入れており、アスリートフードマイスター3級、化粧品検定2級、秘書検定2級を取得している。
http://Instagram.com/_mireka_
https://twitter.com/miiirepon
撮影:坂本 康太郎
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