素敵なお母さんになって人生を楽しんでほしい
女性が活躍できる環境作りを実現している鈴木一輝さん
2019/12/02 Esthetic

株式会社テルズ&クイーン代表取締役 鈴木一輝さん 「素敵なお母さんづくり」というビジョンを軸に、日々変化を重ねながら経営に取り組まれているテルズ&クイーン代表取締役 鈴木一輝さん。また今年、5年ぶりにエスティックグランプリに出場し、モデルサロン部門で準グランプリを獲得されました。会社としての具体的な取り組みや今後の目標について、鈴木さんにインタビューさせていただきました。
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他社にはない強み「素敵なお母さんづくり」
――美容業界に携わるようになったキッカケを教えてください。
鈴木 私は、もともと自動車関連の企業で働いていました。社会人までずっと野球をしていたのですが、肩を壊して野球ができなくなり、社内的にも辞めたらみたいな雰囲気になったんです。ただ当時は、男の転職は人生の落後者のような風潮のある時代でしたので自暴自棄になってしまいました。昭和の男社会で生きたので、いっそのこと女性の業界に入って頑張ってみようという気持ちで美容業界に飛び込みました。
ですから、もともと美容業界にいたわけでも、家業を引継いだわけでもありません。テルズ&クイーンにも、18年前に声を掛けていただいて一般社員として入社したんです。
――エステティックサロンSHARERは、北陸を中心に多店舗展開されていますが、強みはどのようなところですか?
鈴木 美容業界の中には、商品や技術で他社との差別化を図っているところが多いですが、当社は社員で差別化を図っています。お客様から、あの人がいるからお店に行きたいとか、あの人から商品を買いたいとか思っていただける社員がいることが一番の強みだと思います。そして、社員教育の面で他社とは比べものにならない強みがあります。その一つが「素敵なお母さんづくり」です。

お客様から厚い信頼を受けているスタッフが施術しています。
――「素敵なお母さんづくり」とは、どのような取り組みなのでしょうか?
鈴木 当社には100名の社員がいますが、離婚率がほぼゼロなんです。「素敵なお母さんづくり」は離婚をなくすための一環で、そのためにいろいろな仕組みがあります。
例えば新入社員の家庭訪問。家に伺って、ご両親の援助を取り付けます。ちょうど、昨日も家庭訪問に行ってきました。 他にも、選挙に行ったりお墓参りに行ったり、あるいは自分の誕生日はお母さんの出産記念日なので休んでサプライズしたりと、いろいろなことが全て仕組化されていて、それが評価と連動しているんですよ。
会社によくある経営方針や理念を、当社は実践しているわけです。だから、美容業界の中では辞める社員は少ない方だと思います。それは、辞められない仕組みを作っているからです。
企業の目的がハッキリしていないと、社員も何のためにやるのかハッキリしません。例えば、エステだからマッサージしたり、お肌の結果を出したりすることが私の喜びだとか言っていても、それは仕事だけのことですよね。そうではなくて、一人の女性として自分が何のために生きていて、会社が何のために存在しているのか。そういう目的が分からないと、頑張れないじゃないですか。
だから、社員はみんな会社へ勉強に来ているんです。なぜなら、それは幸せになるためです。多くの社員が結婚してお母さんになっていますが、一人の女性として素敵なお母さんになって人生を楽しんでほしいんですよ。
全社員が共通言語を持つことで、共通の認識ができて企業文化が生まれる
――会社の考えや仕組みを浸透させるための研修なども行っているのでしょうか?
鈴木 そうですね。新入社員のときから行っています。会社にとって大切なのは、「共通の言語」があるかどうかだと思っているんです。共通というのは「共通の言語」の他に、「共通の認識」と「共通の道具」があります。経営計画書という共通の道具があり、ここに言葉が全部落とし込まれています。これがあると共通の言葉が話せるので、共通の認識ができて企業文化が生まれてくるんです。
例えば、野球だったら監督のルールブックがあって、監督が代わるとルールブックも変わりますよね。でも当社は、会社を存続させるためにルールブックがあるので、社長がルールブックになっていないんですよ。なぜなら、社長の考え方は変わるからです。
経営には流れがあって、それを読むのが社長の仕事なんです。だから、社長の考えは日々変わっていきます。それを社員が分かっていない会社は、その変化に対して「昨日と言ったことが全く違う」ということになります。しかし当社の場合は、変わることが素晴らしくて、むしろ変わらないことがダメだという考えなんです。社員全員に「変わるものだ」という共通認識があるから、何とも思わない。それが企業文化なんですよ。この共通認識を学ぶための勉強会も定期的に行っています。
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エステティックサロンSHARER金沢本店(左)、名古屋KANAYAMA店(右)
勉強を積み重ね、採用に重点を置いて5年ぶりに出場したエステティックグランプリ
――今年5年ぶりにエステティックグランプリのモデルサロン部門へエントリーして準グランプリを獲得されましたが、なぜ5年ぶりに出場されようと思われたのですか?
鈴木 実は5年前にやめることも、戻ることも決まっていたんですよ。第4回大会まで出させていただいて、第2回と3回は大会準グランプリ、そして4回は大会グランプリをいただいて檀上に上がることができました。ただ、出場し続けていると安心が生まれるばかりです。私たちが変わっていくためには、ブランクを置くことが必要だと思ったので、いったん出場をやめることにしました。その代わり、数年後に戻ることも決めていたんです。戻るためには勉強しなければいけないことが山ほどあるので、毎年大会は見に行っていました。昨年見に行ったときに、戻るのは来年だと思って、今年5年ぶりに参加を決めました。
――5年ぶりの出場に向けて、どのような取り組みをされたのですか?
鈴木 一番は採用ですね。超高齢化社会に向けて真剣に取り組んでいく必要があります。離職が多くて採用が取れないとなれば、会社は存続できません。これはエステ業界に限らず、日本の中小企業はどこでも同じように困っています。それだけ危機感があるから、私たちはこの9年間で採用にとても力を入れてきました。ですから、エステティックグランプリでも、「採用の仕組み」についてプレゼンさせていただきました。
――採用について、何かこだわりはお持ちですか?
鈴木 採用の間口を拡げていることです。エステティックを知らない方でも採用します。事実として四大卒で美容に未経験だった社員も多くいます。そのような方でも働ける仕組みもたくさん用意しています。
目標にできるような存在となり、女性が活躍できる環境作りを広めていきたい
――最後に、今後の目標や展望について教えてください。
鈴木 中小企業の社長さんたちの目標になれるような経営者になりたいと思っています。あとは社員の教育ですね。中小企業の方々は、どのようにしたら女性に力を発揮してもらえるのかについて悩んでいると思います。女性の社会進出は国として後押ししようとしていますが、実際には女性を活躍させられていないんです。でも、逆に私のところは女性ばかり活躍しています。そういうところを私自身もさらに勉強して、どうすれば社員が活躍できるのか、女性がキラキラ輝けるような職場が作れるのかを世の中に発信していきたいと思っています。
また、会社はエステだけでなく、別事業も取り組んでいくつもりです。ただ、基本的なベースが「素敵なお母さんづくり」ですから、そこからズレるとルールが変わってしまいます。全ては「素敵なお母さんづくり」というビジョンから広がっていくんです。女性という部分は限定されているので、そこからビジネスモデルを見つけていきます。

株式会社テルズ&クイーン
代表取締役
鈴木一輝さん
元高校球児。野球で就職するも肩を壊して挫折。20歳でエステティック業界へ。
2002年に株式会社イマージュ(現株式会社TERUS&QUEEN)入社。2016年に6代目代表となり、「成果主義」だった経営方針を「理念浸透型経営」に一転。
理念である「素敵なお母さんづくり」につながるさまざまな制度を導入し、新潟・富山・石川・福井・愛知に全10サロン展開する。
撮影:坂本 康太郎
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