コンビニ感覚で気軽に毎日でも美容室に通ってもらいたい
美容室定額アプリ「MEZON」を開発した鈴木みずほさん
2019/11/25 Application

株式会社Jocy 代表取締役社長 鈴木みずほさん 美容室定額アプリ「MEZON」を運営している株式会社Jocy 代表取締役社長 鈴木みずほさん。職場や自宅付近など、行きつけの美容室に行くという常識を覆し、コンビニのように気軽に美容室を利用できるという独自のサービスが人気を集めています。「MEZON」を始めたキッカケや特徴、今後の展望などについて、鈴木さんにインタビューさせていただきました。
この記事のINDEX
自分自身の経験から、欲しいと思えるサービスを形にした
――美容室定額アプリ「MEZON」を始めたキッカケを教えてください。
鈴木 これは私自身が欲しかったサービスなんです。前職のとき、大事なプレゼンや会食の前など、月4~5回は美容室で髪の毛をセットしていました。そうすると、自分でも驚くほどプレゼンの通過率や商談の成立率が良くて、髪の毛が決まっていると、こんなに自信をもらえるんだなって思ったんですね。そのとき、コンビニ感覚で毎日でも美容室へ通えるサービスを作りたいと思って、MEZONを立ち上げました。
――エステやネイルなども一緒にすることは考えなかったのですか?
鈴木 髪の毛が決まると、女性は自信が湧いてきます。美容室から出てくる女性って、みんな笑顔ですよね。自信をつけるために髪の毛が重要だと思ったとき、他のネイルやまつ毛などは一切考えませんでした。
1都2府7県の提携美容室に通い放題という利便性が高いサービス「MEZON」

――MEZONの一番の特徴はどのようなところですか?
鈴木 行きたい美容室に行けて、通い放題という点が一番の特徴であり、顧客層から支持されている理由です。実際、MEZONは利便性が高いと言われています。例えば、アポイントの間に目的先の近くにある美容室に行く、夜のデート前や友達と食事前に近くの美容室に寄るといった利用の仕方をされている方もいます。また、疲れて帰ってきて家で髪の毛を洗いたくないときに、自宅付近の美容室に立ち寄るなど、予定や用途に応じて選べます。
現在、1都2府7県で展開していますが、働く女性は出張も多いので、MEZONがあればホテルで髪の毛を洗う必要もありません。そうした使い分けができることは、一番大きな特徴だと思います。
――確かに利便性は高いですね。ただ、行きつけの美容室で決まったスタイリストさんにカットなどをしてもらう方が多いのではないでしょうか?
鈴木 確かに私も仕事先が恵比寿だろうが銀座だろうが、必ず表参道にある行きつけの美容室に寄ってから向かっていました。その中でもっとも苦痛だったのは、移動コストがすごく取られることです。
ですから私は、セットだけ、あるいはシャンプー・ブローだけを目的に、いろいろな美容室に通っていました。そのとき、自分の予定に合わせた場所で利用できる美容室があったら、とても便利だなと思ったんです。そこで利便性が重要だと考え、このサービスモデルにしました。例えば、カットやカラーのために、わざわざ行きつけの美容室がある表参道まで出向くのは全く問題ないと思います。でも、日常のシャンプー・ブローやセットとなると、予定の行動線上にないと通いづらいじゃないですか。
――なぜサービス内容にカットを含めなかったのですか?
鈴木 私たちのコンセプトは、コンビニ感覚で毎日利用してほしいということ。ですから、あえてカットを入れませんでした。多くのユーザーさんは長い間ずっと同じ美容室に通っていて、お抱えの美容師さんがいます。そういう人たちも、本当は他の美容室も試してみたいと思っていますが、MEZONの顧客層のメインである30~40代になると、初めて行く美容室でカットしてもらうのが怖いという声が多いんですよ。でも、シャンプー・ブローやヘアケアなら失敗がないので、気軽に通えますよね。
うちのサービスは気軽に通えて、いろいろな美容室を比較できます。そうすると、自分に合った美容室を見つけやすいんです。そういう美容室に出会えば、自然とカット・カラーに繋がっていきます。カット・カラーに繋がったときに、割引する必要がなく、正規の料金を払ってでも切ってもらいたいと思ってもらえることが重要なんです。ですから、あえて定額サービスにして割引でカットするのではなく、お気に入りの美容室を見つけてカットしてみてもらってほしいんです。

お好きな美容室でブローができます。
顧客が増えた分だけ美容室の利益が上がり、アイドルタイムも収益化できる
――美容室側から見ると、いろいろな美容室に行くことで、既存顧客が離れてしまう可能性はないのでしょうか?
鈴木 現在、提携してくださっている美容室さんは330軒(2019年10月頭時点)ありますが、皆さん競争だと理解しています。それがモチベーションになるようなんです。選ばれなければ悲しいけど、MEZONのお客様はいろいろな美容室に行くので、戻ってきてくれたときの喜びがとても大きいと仰っています。そういう競争がダイレクトに分かるので、むしろやりやすいという声が少なくありません。私たちは理解を得られるよう、「投資だと思って、シャンプー・ブローとヘアケアで信用を築いてください」と説明しています。
――具体的に、提携美容室にはどのようなメリットがありますか?
鈴木 大前提として、美容室さんからは一切お金を頂いていません。ビジネスモデルはとてもシンプルで、私たちはユーザーさんから月額費用を頂戴します。そしてユーザーさんが美容室に行ったら、私たちがサービス料金をお支払いするわけです。つまり美容室側は、お客様が来た分だけ収益を得られるモデルになっています。 そのうえで美容室のメリットを挙げると大きく3つあります。一つ目は「顧客層」です。価格ではなく質を重視して美に投資する層なので、質の高いお客様と接点が持てます。
2つ目はシャンプー・ブローとヘアケアに特化しているので、手の空いているアシスタントさんが空き枠の収益を生んでくれる点ですね。MEZONのお客様は、アイドルタイムと呼ばれる平日の12~18時の利用がとても多いんです。この時間を埋めてくれて、アシスタントさんが収益化してくれることで、お店全体のパフォーマンスを上げてくれます。
そして3つ目が、来店頻度がとても高いので、シャンプー・ブローやヘアケアで信頼関係を築くと、アップセルに繋がることです。例えば、カット・カラーなど、顧客単価がアップしていくわけです。
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提携美容室は1都2府7県にあるので、予定に合わせて近くの美容室を利用することができます。
大阪にあるELLE salon(左)と銀座にあるQUEEN_S GARDEN by K-two GINZA銀座(右)
――現在アプリの利用者はどのくらいいるのですか?
鈴木 利用者は約2万2千人(2019年10月頭時点)で女性が9割です。でも、結婚相談所さんと男性の身だしなみをケアする取り組みで提携しており、そういう背景から最近は男性がとても増えています。
――このサービスを始めたことで美容業界に何か変化を感じられていますか?
鈴木 すごく感じています。私たちが何をしたかったかというと、「美容室の役割を定義したい」という思いが強いんです。カット・カラーは大事ですが、プラスαの付加価値を付けることによって、美容室業界の売り上げを底上げしたいと思っているんです。
実際、MEZONをスタートしてから、スタイリストさん単位の売上が上がり始めています。MEZONの一人当たりの年間の顧客単価は20万4千円です。これを1回の単価で稼ぐことは厳しいですが、私たちの魅力は来店回数が多いこと。そのため、積み上げ式で信頼関係を作っていくことができます。その結果として売上が上がり、高い頻度で接点を持つと、お客様が他に行きにくくなるわけです。このまま広がっていけば、業界の底上げに貢献できると思っています。
MEZONの文化を日本全国へ広げ、美容室の経営課題も解決したい
――最後に、今後の展望や新たな取り組みなどについて教えてください。
鈴木 まずはMEZONを全国展開させ、ユーザーさんとサロンさんの数を大きくしていくこと。そして、この文化を日本に浸透させたいと思っています。その中で付随してやりたいことはたくさんありますが、今MEZONのオリジナルメニュー作りを始めています。フルカラーとフルカラーの間に中間の補正カラーのメニューを作っています。そういう意味ではヘアケアメーカーとしての役割も担っていきたいと思っています。

株式会社Jocy
代表取締役社長
鈴木みずほさん
大学卒業後、不動産営業を経て、5年半サイバーエージェントグループに在籍。
新規事業立ち上げメンバーとして、通信会社・データ保有会社などの大手企業と事業提携を行い、WEB広告の商品企画から開発まで従事。
2017年、株式会社Jocyを設立。2018年3月、シャンプー・ブロー、ヘアケアに特化した美容室定額アプリ「MEZON」をリリース。
撮影:坂本 康太郎
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