カットを通じてお客様のあらゆる悩みを解決する
ホリスティックヘアカットを生み出した美療家・大峰浩喜さん
2019/11/15 Hair salon

ヘアサロンEQUIP代表取締役 大峰浩喜さん 日本におけるドライカットの第一人者であるヘアサロンEQUIP代表取締役 大峰浩喜さん。ニューヨークで学んだドライカットをバージョンアップさせた「ホリスティックヘアカット」を考案した大峰さんは、その技術はもちろん、日本一高額な価格設定としても注目を集めています。美容と医療を組み合わせた「美療家」としても活動されている大峰さんに、ホリスティックヘアカットや美療家について、インタビューさせていただきました。
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美容をベースに医療的思考をマッチングし、癒しを提供する美療家
――美療家を目指されたキッカケを教えてください。
大峰 実家が50年続く美容室で、今も母親は現場に立っています。その姿を、子供の頃から見てきました。両親からは、男性で美容をやるなら「美容家を目指さないと」とよく言われていたんです。それで美容家として活動していくうちにもっとメンターよりにということで「美療家」名乗っています。
――美療家とはどのようなものなのか、具体的に教えていただけますか?
大峰 美しさをベースに療す、美容と医療をマッチングしていくものです。例えば、ダイエットも、苦しまず楽しんで取り組めるといった感じですね。
私自身、美療家として活動するために、一般でも受けられるドクター向けの生化学の講座などを受講しています。最初は全く分かりませんでしたが、身体の仕組みを勉強することで、いろいろなことが分かるようになりました。
例えば、肩や首が痛いとします。医療の場合、まず検査、それから処方ですよね。でも私の場合は、その方の日常の話や立ち居振る舞いなどを見ます。そういうところにも症状が出るキッカケがあるので、私は美容的な見地に立って、お客様一人ひとりに寄り添うようにしています。

ヘアサロンEQUIP成城店の外観
ニューヨークで学んだドライカットを元に考案したホリスティックヘアカット
――大峰さんは日本におけるドライカットの第一人者と言われていますが、ドライカットという技法はいつ頃できたものなのですか?
大峰 ドライカットは、ニューヨークのジョン・サハグ先生が考案したもので、髪の毛が乾いた状態でカットする技法です。今は乾いた状態で切ることをすべてドライカットと呼んでいますが、私たちの捉え方はシステムが少し違います。ブロックカットと言って、頭を数ブロックに分けて、髪が落ちる位置で乾かした状態で切っていくんです。

――なぜドライカットの技術を身に付けようと思ったのですか?
大峰 EQUIPを開業して今年で30年経ちますが、それ以前にニューヨークで勉強したのが始まりでした。髪の毛を濡らしてカットするウエットカットは、日本をはじめ世界中に浸透していますよね。でも、一人ひとり頭の形は違いますし、髪の毛の癖があるので、うまくいかないと思っていたんです。そんなとき、ニューヨークにいる先輩にドライカットのことを聞いて、旅行で行ったときにジョンさんのカットを紹介してもらいました。
帰国後、ロングヘアーでくせ毛のお客様で、カットするといつもまとまりづらくて苦労している方がいて、国際電話でどうやって切ったらいいか相談したんですよ。そうしたら、「全部ブロードライして乾かして二つのブロックに分けて、立ってもらって切ってみてね」と言われたんです。それだとブツ切りになると思ったんですけど、聞いたとおりカットしたんですね。そうしたら、後日、そのお客様がお店に来られて、クレームかと思ったら「自分で乾かしても綺麗になる」ってすごく喜ばれたんです。それで「これだ!」と思って一年後にニューヨークに行ってドライカットの技術を学びました。
ただ、私自身今ではドライカットではなく「ホリスティックヘアカット」と呼んでいます。
――ドライカットとホリスティックヘアカットは、どこが違うのでしょうか?
大峰 ホリスティックヘアカットはドライカットをバージョンアップさせたものです。そもそもホリスティックとは、全容や全体という意味です。つまりホリスティックであるということは、身体全体のバランスが見れているということ。生化学的に身体がどうなっているかという点などとても腑に落ちたので、今はお客様が来ると身体の癖を全て見ています。例えば、重心が身体のどちら側に来ているのかとか、バッグをどちらにかけるか、といったことも見ています。身体全体のバランスなども考慮してヘアデザインしていくことで、お客様の悩みを解決していきます。
本当はカットは30分で良いので、残りの60分はその人のことを見ていた方が悩みを解決してあげられる。それがホリスティックです。その人の優れている部分を伝え、「あなた大丈夫ですよ」「胸を張って帰ってください」って送りだしてあげたら、すごく自信になるでしょう。ただ髪の毛をカットするだけではなく、その人自体の造形を全部シェイプしてあげることが大切なんです。
※ホリスティックヘアカットの所要時間は約2時間です。
独自のカウンセリングシートを元に、お客様のイメージを具現化
――カットする際に、カウンセリングのようにお客様の悩みを聞かれているのですか?
大峰 私が作った独自のカウンセリングシートに答えてもらいます。一つは、髪についてのシートで、髪の毛が細いのか太いのか、量が多いのか少ないのかなど本人のイメージを書いてもらいます。もちろん合っていることもありますが、2割くらいはハズレているんですよね。その場合は、自分で思っていることと違う点についてすり合わせしていきます。
もう一つのシートは、食べ物のこと、使っている美容グッズ、あるいは身の回りにある心の悩みなんかを書いてもらうようにしています。そうして分かった課題を、全てカットを通じて解決するわけです。
――病院の問診票みたいなイメージですか?
大峰 そうですね。いろいろ細かく書いてもらってイメージを何個も言ってもらいたいんですよ。よく美容室に行くと、スタイリストが「今日はどうしますか?」って聞きますよね。聞かれたら「2㎝切ります」とか、お客様が自分で決めないといけないんですよ。それって、おかしいことなんです。私だったら、「どんな風になりたいですか?」って聞きます。「若く見えたいです」とか「男性にモテるようになりたいです」とか言ってもらった方が良いんです。だから形容詞化してもらって、そのイメージを具現化するようにしています。

面長が強調されていて寂しい雰囲気 |
顔周りの“額縁”が均等に膨らみ、 |
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後ろ下がりに引っ張られ、重い感じに。体型にメリハリがない |
髪のバックボリュームが上がり、 |
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大峰さんのホリスティックヘアカットによって、お客様の悩みを解消します。
――大峰さんのカット料金は7万円で日本一高いと言われますが、カットだけでなく、カウンセリングも含めて身体全体をトータルで見て悩みを解決していくというころから、この価格設定になったのでしょうか?
大峰 そうですね。でも本当は10万円にしようと思っていたんですよ。現在も世界中で活動しているNY時代の仲間がいますが、約10万円くらいでやっているんですよ。ですから、皆からなぜ日本なのにそんなに安いのかと言われますよ。実際、銀座のお店にいたときは、中国を主とした外国のお客様からは10万円いただいていました。日本人割引で3万円安くし、7万円にしたんです。
――会長を務められている「DNET(ドライカットクラブネット)」も、ドライカットを広めるために作られたのですか?
大峰 私は日本全国でドライカットの講演や講習を行い、カット方法を教えていますが、本格的に勉強したいという人のためにドライカットクラブネットを作りました。オーナーシップクラブ制度で皆さんから会費をいただいて、年数回の行事を通じていろんなことを共有しています。例えば、材料を共有することで少しでも安く入るようにして、その代わりにディーラーやメーカーの宣伝活動にグループが役に立てるようにします。
――ドライカットクラブネットのメンバーは、全国にいらっしゃるのでしょうか?
大峰 ドライカットができる美容師は全国にたくさんいます。今までは地方だとカット料金が3千円とか4千円とかだったのが、ドライカットクラブネットのメンバーは約1万円くらいでカットをしています。ドライカットを習得することで料金が上がっているんです。これはとても大事なことで、私たちは業界全体でベースを上げられるようにしようといつも話をしています。
後進を育て、従来から変わらない美容業界に変革をもたらす
――美容業界を変えたいという思いで活動されている部分もあるのでしょうか?
大峰 オープン当初から、美容業界そのものを変えてやろうという気持ちでいます。業界を良くしたいと思っている美容師は多いと思いますが、なかなか変わらないのが現状です。働く環境については、きちんと休みが取れて給料も出てと、少し変わってきています。そんな中で私が特に感じているのは、先ほども申し上げた料金のことです。チャージを上げられないことが業界最大の問題で、単価を上げるために自分にどんなオプションを付けるかが大切なんですよ。その一つが、私たちの場合は、ドライカットなんです。業界を発展させていくためには、みんなで安くするのではなくて、みんなで高くしてもお客様が満足できる方向にいった方がいいということを提案しています。

ヘアサロンEQUIP成城店の店内
――最後に、今後の展開について教えてください。
大峰 後進を育てていくことですね。そして、やはり高いところで勝負してほしい。EQUIPはスライド方式で金額が上がっていきますが、これはニューヨーク方式なんです。店長が、料金を上げたらそのまま付いていくか? その下のスタイリストに特徴などを伝えて引き継ぐか? の選択をしてもらいます。その方が、他店に行ってしまうよりもサロンにとってもお客様にとっても良いように。
ですから私が2万だとすれば、店長は1万円。そしてジュニアの人が一番安く設定し、誰でも良いというお客様には「この料金でできます」というシステムを作っています。これをスタンダードにしたいと思っているんです。
そしてもう一つは美療家として、本物の医療の話ができるようにしていきたいです。病気になったときに病院で治してもらうことも必要ですが、美容師はお客様を元気にすることをしています。医療ではなく、サロンに美療があることが当たり前になるようにしていきたいです。

ヘアサロンEQUIP
代表取締役
「ドライカットクラブネット」会長
大峰浩喜 さん
1984年山崎伊久江美容室本部講師就任。同美容室退社後、ニューヨークへ渡米しドライカットを修得する。1989年に成城学園前に「EQUIP」、1991年に田園調布に「NeoEQUIP」オープン。その後、拡張移転を繰り返し、現在は成城学園前と二子玉川に店舗を構える。
また、店舗経営すると共に、「ドライカットクラブネット」の会長を務め、全国各地でティーチイン及びデモンストレーションを展開している。
撮影:坂本 康太郎
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