「シミ」に特化したサロンを地域密着で展開しながら、
業界の発展にも尽力
エステティックグランプリで初の女性理事長を務めた三谷愛さん
2019/09/09 Esthetic

株式会社エルピス代表取締役社長 三谷愛さん 大学卒業後、OLとして証券会社に勤務。その後、家業の株式会社エルピス「クリニカルエステ花蔵」を継ぎ、店舗展開してきた三谷愛さん。2017年には女性として初めてエステティックグランプリの理事長に就任。会社経営に取り組みながら、エステ業界のために活動してきました。「シミ」に特化した独自の経営手法、そしてエステティックグランプリ理事長としての活動についてインタビューさせていただきました。
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お客様の悩みに応える形で「シミ」に特化した
エステサロンをスタート
――花蔵さんは、もともと呉服屋さんとして創業されたんですよね。
三谷 そうですね。「きものの花蔵」という呉服屋でした。エステを始めたのは、26年前にスタッフがエステをやりたいと言ったことがキッカケです。私は幼い頃から、両親に「呉服屋は継がない」と言っていたんですけど、子供ながらにエステの仕事は魅力的でエステサロンだったら継いでもいいかなって思ったんです。
おそらく両親は、大学を卒業したら家業を継ぐと思っていたと思いますが、その頃すでに店舗が増えてスタッフも多かったので、私には荷が重いと思って、卒業後は証券会社に就職しました。
ただ、両親も歳をとり、誰かが継いでいかなくてはということになったんです。もともとエステは好きだったので、エステの学校に通って勉強してから、会社を継ぎました。
――シミに注目して特化してきたのはなぜですか?
三谷 エステを開業した当初、現会長であります三谷ヒサ子もシミで悩んでいました。憂鬱な気持ちで毎日悩みながら、シミを取るためにいろいろな方法を試しました。そして何年か経ったある日、「これだ」という方法にたどり着きました。やっとの思いで巡りあったその感動がシミケア一筋・花蔵の創業の原点であり、多くのシミで悩む女性に伝えたいと、以来シミケア一筋に取り組んできました。シミに特化したエステティックサロンという方針を打ち出し、模索しながらここまでやってきました。シミだけに特化しているので、脱毛も痩身もボディもやっていません。これはエステ業界では珍しいようで、いろんなオーナーさんとお話をする機会がありますが、フェイシャルだけで売上を立てていけるのは凄いとよく言われますね。
お客様にとっては、メニューがたくさんあって、いろんな施術を提供しているサロンの方が良いのかもしれません。でも、うちの場合はお客様の悩みが明確で、本当にシミで困っておられる方が利用してくださいます。逆に、それが花蔵の強みになっていると思うんです。
一般的なエステサロンは、脱毛や痩身が多いので20、30代のお客様が多いと思います。しかし弊社の場合は、50、60代のお客様がメインですので、定期的に通っていただけます。もちろんシミ専門と打ち出しているのでお客様の期待値も高いですし、リラクゼーションとは違うので、結果を求めていらっしゃいます。そのご期待にどれだけお応えできるのかが、私たちの使命だと思っています。
お客様の期待に応えるためにスタッフは日頃からシミについて勉強しています。私も、新人や未経験のスタッフへのシミに特化した内容の理論や技術研修では今でも携わっています。
花蔵に通っていただいて、美の習慣という部分でもお客様と二人三脚で修正していきますので、アドバイスをさせて頂きながらやっています。


落ち着いた雰囲気の施術ルーム(行田本店)で、お客様一人ひとりのシミの状態に合わせてケアを行います。
――御社のこだわりの一つ「三面美容」の内面的なサポートとは、どのようなことを提供しているのですか?
三谷 外面美容、内面美容、精神面といったように内面的、外的要因からお肌を守るサポートをしています。難しいことではなく、美容の観点からシミやシワになりにくい、食生活や生活習慣についてアドバイスさせていただいています。例えば、シミの原因にはいろいろありますが、引き金になるのはやはり紫外線です。外側のUVケアはもちろんですが、サプリメントを摂るなど身体の内側からも紫外線に対抗できるようにケアする必要があります。
サロンに通っていただくのは、多くても週に1回程度。ですから、日頃のセルフケアがとても大切です。巷には情報がたくさん溢れていて、皆さんいろいろ試されていますが、逆にそれがお肌を傷める原因になることも少なくありません。ですから私たちは、間違った知識でシミにならないようにアドバイスしています。
例えば、洗顔方法やお肌に付ける物の選び方など、ご自宅でできることもアドバイスさせていただいています。生活習慣を変えないと、なかなかお肌は改善していきません。
あとは弊社で取り扱っている商品やPB商品についても、なぜこの商品を使っているのか、なぜお肌にいいのかもきちんとご説明させていただいています。
――自社ブランド商品はどのようなキッカケで作るようになったのですか?
三谷 花蔵として結果を出すために、こだわりを持った商品が必要だと思い、自社ブランドを作りました。一番はゲル化粧品です。ゲルはお肌の細胞間脂質と同じ自然界の成分で、海や山のものを動物性のものから抽出して自然に近い状態で作っています。ですから、表面上をケアするだけでなく、お肌にしっかり浸透するんです。
ただし、成分がとても濃いのでサロンだけの専売品です。インターネットなどでの販売は考えていません。エステティシャンがお客様のお肌を見て、しっかりフォローできる体制でお使いいただいています。

素材にこだわった花蔵のオリジナルブランド 「H-Bj」シリーズ(ゲルクレンジング、ゲルクリーン、ブライトニングローション)
創業当時から地域に根付いて事業を拡大
――花蔵さんは埼玉県下に8店舗、群馬県に1店舗ありますが、地域密着型を意識しているのでしょうか?
三谷 はい。呉服屋を創業した頃から、ずっと地域に根ざして商売していきたいという考えがあり、この方針はこれからも変わらないと思います。埼玉県内に根付いて花蔵としてのマインドがおよぶ範囲内で、スタッフの数や規模を維持していくつもりです。現時点で、大手さんのように全国に店舗を展開していくことは考えていませんが、埼玉県では花蔵のブランドを広めていきたいと思っています。
弊社のこだわりは「特化しているシミを極めていく」、そして「地元に根付いて、しっかり地に足を付けてやっていく」、この二つなんです。
――代表としてエステ業界に携わるようになって、業界が抱えている課題について感じることはありますか?
三谷 お客様の年代層によって違ってくるとは思います。私はこの間までエステティックグランプリの理事長をさせていただいていたのですが、それまでは業界についてはあまり意識したことがありませんでした。ただ、エスグラの活動で全国のオーナーさんとお話をすると、ここ数年は人材不足が一番の課題かなと思っています。
女性初のエステティックグランプリ理事長として
様々な改革に取り組む
――どのような経緯で、エステティックグランプリの理事長に就任されたのですか?
三谷 現在エステティックグランプリは10期目に入りましたが、私は1年目から実行委員会で活動してきました。3期目からは理事を、さらに3代目の理事長のもとでは副理事長を務めさせていただきました。エスグラは業界全体のことを考えて活動している団体なので、ずっと活動をしていく中で、私の中にも使命感のようなものが生まれ、4代目理事長に立候補させていただきました。
――理事長としてどのような活動に取り組まれたのでしょうか?
三谷 私が2年間の任期の中で行ってきたことは、大きく分けて3つあります。1つ目は、エントリーしてくださったサロン様の業績が良くなること。それをまず一番に考えました。接客レベルや質の向上は、エスグラが大切にしてきたことです。エスグラに関わって顧客満足度を追求することで、業績が良くなってもらえるようにサポートしてきました。
2つ目は、これまでフェイシャル技術部門とモデルサロン部門の2部門だったのですが、ボディサロン部門を新設して3部門にしました。痩身を扱っているサロン様にもエントリーしていただき、質やお客様満足度の向上を追求してほしいと思ったんです。
そして3つ目は、未来のエステティシャンを育成していく取り組みです。普段エステに触れる機会が少ないため、将来エステティシャンになりたいという子供がほとんどいません。早い段階でエステティシャンという職業を知ってもらえるよう、サロンに招待して体験してもらう活動をしてきました。また、専門学校を訪問して、オーナー目線でお話をさせていたくボランティア講義なども実施しました。
さまざまな取り組みをしてきましたが、理事長としての一番の役目は、次の世代が活躍しやすいように良い状態で引き継ぐことだと思って2年間活動してきました。

――理事長としてさまざまな取り組みをしてきて、三谷さんの中で何か変化はありましたか?
三谷 本当にいろいろ勉強させていただきました。エステティックグランプリはボランティア団体ですから、本業がある中で業界を良くしたいという有志が全国から集まって活動しています。かつてエステ業界では、自社のノウハウを公開するなんてありえないことでした。しかし、今ではエスグラの中でノウハウを互いに教え合う環境ができています。それも、お互いに高め合って業界を良くしていきましょうという想いからなんです。「共に学び、共に成長し、共に輝く」というエスグラの理念が浸透してきたから、それが可能になったのだと思います。エスグラは、この理念を大切にしていて、決してブレません。会社に置き換えてみて、理念経営をしていくことが本当に大事なことなんだと感じました。
また、私が業界を良くしようという活動を本気でやっていることに対して、社員も誇りに思ってくれたようです。これは良かったことですし、私にとって嬉しいことでした。スタッフがすごく頼もしくなりましたね。
とても濃い2年間でしたが、任期を終えて今思うのは、理事長としてできなかったこともありますが、もっとこうしておけばよかったという後悔は一つもありません。
花蔵ブランドの確立と、エステ業界の発展に尽力していく
――最後に、今後の展望をお聞かせください。
三谷 花蔵としては、あと1店舗増やして10店舗にすること。そして、地域に根差した花蔵ブランドを確立していきたいです。人材育成にも力を入れ、世の中に誇れる人材をたくさん輩出したいですね。
エスグラの活動には、これからもいろいろな形で関わっていくと思います。出産や育児などでライフステージが変わっていく女性にとって、エステティシャンは社会で自立して長く活躍していける職業だと思います。ですから、エステティシャンの社会的地位が向上するような活動をしていきたいです。
また、今、日本式のエステが中国をはじめとするアジアで注目されています。日本式のエステを中国にということで、中国で開催する展示会にエスグラエスティシャンを連れていく計画があります。国内だけでなく、今後は海外にも目を向けていろいろな活動をしていきたいと思っています。

株式会社エルピス 代表取締役社長
三谷 愛 さん
2012年に株式会社エルピスの代表取締役社長に就任。以来、従業員約70名を葦引し、埼玉県下8店舗、群馬県高崎市に1店舗のエステティックサロンを経営する傍ら、一般社団法人エステティックグランプリ理事としての活動を行う。2017年からは女性初のエステティックグランプリ理事長として業界の発展に尽力。 その他、エステティシャン ・ エステオーナ一向けに講演も多数行っている。一児の母であり、その経験から女性の自立、働く女性を応援する企業を目指しており、「美」を通して未来に、そして社会に貢献することをモットーとしている。
撮影:坂本 康太郎
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