お客様のワクワクした期待感を上回り、眠りを楽しんでもらいたい
「悟空のきもち」立ち上げから
技術創出まで携わってきた、渡部蓉子さん
2019/07/20 Supa

「悟空のきもち」ヘッドマイスターの渡部蓉子さん 日本初の頭もみほぐし専門店「悟空のきもち」で施術を手掛けるヘッドマイスターの渡部蓉子さん。入社当時から、他スタッフと共に研修を重ねながら「絶頂睡眠」など“眠り”に着眼した技術開発に携わってきました。さらには屋外を移動する畳「ただの畳」にも関わるなど、枠にとらわれず幅広く活躍されています。入社のきっかけや睡眠を軸とした技術開発のなどについてインタビューさせていただきました。
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未経験からスタートし、
技術はスタッフみんなで作り上げた

原宿神宮店の1Fフロア。ドアを開けた瞬間に異空間に引き込まれます。
――渡部さんは、「悟空のきもち」立ち上げ時から、代表の金田淳美さんと一緒にやってこられたのでしょうか?
渡部 はい。立ち上げ時のオープニングスタッフ募集のチラシを見て応募し、それから一緒にやってきました。当時は専門学校を卒業したばかりで、どうしても行きたいエステの会社があったんですけど、その会社が3カ月で倒産してしまって…。身体や頭など違う視点から癒しに関する仕事を探していたときに出会ったのが「悟空のきもち」でした。
ヘッドスパに特化していることは知っていましたが、当時は頭に関する知識はありませんでした。ただ、専門学校でクリームを使った頭を施術する資格を取得して、それが寝たまま頭をマッサージして寝てしまうような技術だったのですが、楽しそうだなという印象はありました。
――技術はどのようにして身に付けていったのですか?
渡部 立ち上げたばかりだったので、技術そのものもスタッフみんなで毎日作り上げていくような感じでしたね。「どうすれば気持ちいいのか」、研修を続けつつ改善を重ね、出来上がっていきました。今も技術はどんどん改良されていて、最初は頭をほぐす施術だったのが、例えば「絶頂睡眠」ができたときに、逆に180度寝させる方にシフトしてみようということになり、少しずつ絶対に寝させるような施術にシフトしているんです。

弊社の社員が実際に施術を体験。すやすやと眠りに落ちました。
絶頂睡眠のきっかけは、
お客様の声から気付いた“寝落ち方”の違い
――頭をほぐす施術から寝かせる方向にシフトチェンジしたきっかけは何だったのですか?
渡部 施術後にお客様にアンケートを取っているのですが、寝なかったお客様よりも寝たお客様の方が圧倒的に満足度が高いことが分かったんです。そこで、寝かす施術をつくろうというのが1つのきっかけですね。
それからほとんどのお客様を寝かせられるようになったのですが、よく見ると寝た人にも違いがあることに気付きました。その違いが寝落ち方だというところに至り、そこで作ったのが「絶頂睡眠」なんです。
寝落ち方の良い人と悪い人、あるいは普通に寝た場合と一気にズドンと寝た場合だと、ズドンと寝た方の満足度が高いんですよ。睡眠って謎が多くて、最適な睡眠時間も分からなければ、夢を見るメカニズムも分かっていません。そういう意味で、私たちは世界最大の睡眠に関するデータベースを持っていると思っています。実際にどう眠ったのか、そしてどうすれば眠るのかが分かるわけですから、その価値をさらに新たな施術へ活かしていくように進化しています。
――眠らせるという方向へシフトチェンジした際、技術面で変えたことはありますか?
渡部 たくさんあるんですけど…。施術していく中で、お客様それぞれの頭の形が分かるようになってきました。例えば浮腫んで柔らかかったり、あるいは一般的に固いと言われているような頭だったり、人によっていろんな頭があります。でも私たちの中で、そういうことと眠りの落ちやすさとは無関係という認識なんです。ですから手技はもちろん、頭をほぐすリズムやタイミングなど、一人ひとりに合ったものを提供するように変えていきました。
気持ちいいというところから、少しじらすことで“めちゃくちゃ気持ちいい”となったタイミングでストンと眠りに入れば、それが一番気持ちいいのかなとか。そういうことを考えながら、お客様に楽しんで眠ってもらえたらと思っていました。
――現在は国内4店舗で100名ほどのセラピストの方が働いていらっしゃいますが、どのようにして全員が同じ技術を習得しているのでしょうか?
渡部 入念に研修を行っています。あと全員が頑張る理由は、お客様の期待値がとても高いからです。学術的なマニュアルがあるわけではありませんが、一人ひとりのお客様の期待に応えるために頑張るんです。ある意味、施術は音色だと思っていて、楽器と同じようなイメージで、それを各個人に合った音楽にすることが大切なんです。
全員が同じ音楽を奏でているわけではありませんが、むしろそれを認めているからこそ、新しい技術がどんどん出てくる。そういう、伸びる土壌のようなものは持っています。
お客さんのワクワクした期待を超え、
楽しい時間を提供したい

――渡部さんが施術の際に心掛けていることはありますか?
渡部 たくさんあります。お客様は、表情には出しませんが心の中でワクワクしてご来店されます。その期待を超え、最高に楽しかったと言ってもらえるような施術を常に心がけています。お客様のワクワクしたテンションを感じると、とにかく寝かせたくて燃え上がります(笑)。
あとは先ほど申し上げたように、お客様一人ひとり頭の形や固さが違うので、施術しながらお客様の表情を見てリズムを変えたりしています。ですから、毎回同じということはありません。
――施術するのは女性だけと伺いましたが、その意図や環境作りの工夫などはありますか?
渡部 男性型の縦社会のシステムがあると職場がギクシャクする可能性があります。女性は縦社会に置くと歪みがちになるので、横に置いた方がいいと思っています。縦に置いてしまうと、だいたい上の人が潰れちゃうんですよね。弊社は女性だけなので、男性的なシステム、例えばこの店には店長もマネージャーもいません。
あと、男性社会で活躍する女性って、なんとなく男性っぽさがある気がしています。でも、それは違うと思っていて、やはり女性らしく活躍するためにどうすれば良いのかというと、真横の社内システムなんじゃないかなと。部署などもなく、全員が同じように仕事していた方が良いという考えです。入社したばかりでも自分が頑張ればチャンスをつかむことができます。
――御社では「熟睡用たわし」など商品も開発されていますが、渡部さんも商品開発に携わっているのでしょうか?
渡部 やりたい人は手を挙げますし、やりたくない人に強制はしません。ですから、特に商品開発部も作っていないんです。誰がやると決めているというより、話を聞いてやりたい人を募るような流れですね。私は、今年1月に発表した「ただの畳」に参加しました。普段は店内で施術していますが、風を感じて風通しの良いところでお客様に寝ていただけたら、私もお客様も幸せだと思ったんです。
私たちの本業は人を癒すこと。でも、あるとき枕を作ってみたいという人が現れたり、外で風を感じながら施術したいという意見が出たり。そういう“やりたい”という気持ちから、実際の商品化などに繋がっています。

大ヒットした「熟睡用たわし」と、今年1月に発表した「ただの畳」
いろんな人の睡眠のイメージを表現しているのが
一つのコンセプト
――悟空のきもちは、銀座店は「睡眠のジェットコースター」、表参道店は「かぐや姫の月の家」、原宿神宮店は「眠るタイムマシン」など、各店舗ごとにテーマを設けていますが、コンセプトについて教えてください。

原宿神宮店の地下1階「竹」をモチーフにした施術フロア(左)と、
「睡眠宇宙船」をイメージした原宿神宮店の2階施術フロア(右)
渡部 基本的には、“アトラクション睡眠”というのが全体のコンセプトです。外で楽しむ睡眠という意味で、睡眠に楽しさというものをどう加えるか、睡眠体験をどんな見せ方にするかという感じで作っています。
一つひとつがアトラクションなんですよ。例えば、原宿神宮店の“タイムマシン”というコンセプトは、お客様の「悟空のきもちの施術を受けたらタイムマシンみたいだ」という一言がきっかけなんです。タイムマシンのように時間が飛んだってことを具現化してデザインしました。
睡眠ってすごく抽象的なものなので、ふわふわ無重力だっていう人もいれば、なんだか甘い感じだった、という感想もあります。そういった、いろんな人の睡眠のイメージを表現しているのが一つのコンセプトですね。

原宿神宮店 3階の施術フロアは、お客様の一言がきっかけとなった
「タイムマシン」をコンセプトにした内装
――最後に、今後取り組んでいきたいことについて教えてください。
渡部 森の中や星空の下など、大自然の中でやってみたいですね。例えばその辺の土手で、普通に電車の音なんかが聞こえていてもカーッと寝かせちゃうとか(笑)。
今「ただの畳」っていうものに取り組んでいて、先日、よみうりランドさんでやらせてもらいました。近々これを予定していて、夏の星空の下で丘を登っていく、そんなイメージ場所を探しています。
高原の丘の上で、星空に向かって走るようなものを作りたいと思っています。これかも新しい可能性を追求していきたいですね。

ヘッドマイスター
渡部 蓉子 さん
日本初の頭専門店「悟空のきもち」の創業メンバー。
人気の歴史・技術の歴史をすべて知り尽くし、その施術は数々の有名人・著名人より指名を受ける超人気セラピスト。

株式会社ゴールデンフィールド
悟空のきもち京都本店
住所:京都府京都市中京区寺町四条上る中之町559 菊水ビル6階
※他、大阪・東京・ニューヨークに店舗有
TEL:075-256-8437
https://goku-nokimochi.com/
撮影:坂本 康太郎
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