「最後にたどり着くための場所」であるために
セラピストとして愛され続ける、浅川由美さん
2019/06/25 Salon

「BEAUTY & SPA chaleur+」のオーナーセラピスト、浅川由美さん。 業界最大手にてエステティシャンのキャリアをスタートし、世界屈指の高級ホテル「マンダリンオリエンタルホテル」のセラピスト、さらにスパプロダクトのインストラクターとしてスキルを磨き、名だたる有名人や海外のセレブを数多く担当してきた浅川さんに、自身のサロンのオープンについてと、数か月先まで予約が埋まるサロンづくり、そしてゴッドハンドと呼ばれるまでをインタビューさせて頂きました。
この記事のINDEX
空間、音楽、香りなど、
全てを心地よく感じてもらうことがコンセプト
――サロンのコンセプトや立ち上げに向けた思いを教えてください。
浅川 これまでエステからホテルスパ、そしてインストラクターの道を進み、ずっと現場で経験を積んできました。その中で、女性は常に「健康でありたい」「キレイでありたい」と願っているのだと感じたんです。そうした方々に、自らの手で喜んでもらい、健康になってもらえる仕事に携わりたいと思ってきました。
「chaleur+」は、主に今までたくさんの施術を受けてきた方が多く、例えばクリニックやホテルのスパ、あるいはエステなどに通ってきた方々が、最後にたどりつく場所にしたいというのが一番のコンセプトです。
それを実現するために技術はもちろん、お客様へのおもてなし、空間や音楽、香りなど全てに心地よいと感じられる、そんなサロンにしたいという思いでオープンしました。
――技術や空間など、どれか1つに特化するのではなく、トータルでお客様に喜んでいただくことが大切なんですね。
浅川 そうですね。もちろん技術は絶対に必要ですが、これまでいろいろ良いものを見てきたお客様が多いので、それだけではダメなんです。
日頃から疲れている方、忙しく働いている方など、生活スタイルは人それぞれ異なります。そういう方々が、一歩足を踏み入れた瞬間から日常とは違う空間でリラックスし、外界のことを忘れてホッと一息ついてもらいたいという思いがあります。そのためには全てがトータルにできていないといけないというのがこだわりです。
ですから、場所選びはもちろん、空間作りのためにソファ一つ、テーブル一つにもこだわりを持って選びました。


浅川さんのこだわりが詰まった、
大きな窓から豊かな緑と暖かな光が差し込む施術ル―ム
マニュアルのない手技や複合的なメニューで、
お客様の抱える課題を根本から改善
――数種類あるトリートメントメニューの中で、人気のメニューはどのようなものですか?
浅川 一番人気があるのは、他にはない「シャルールカスタマイズトリートメント」というコースですね。これは120分・150分・180分の3コースに分かれていて、予約の時点では時間枠だけ押さえてもらっているんです。なぜなら気分や肌のコンディション、身体の状態は、お電話いただいたときと実際にお越しになったときでは全く異なるからです。そのため、トリートメントはご来店時のコンディションに合わせてカウンセリングを行い、フェイシャルやボディ、ヘッドマッサージなど、すべてカスタマイズしてご提供しています。
恐らく他店では、フェイシャルやマッサージなどの手技について、マニュアルがあると思います。しかし、うちにはマニュアルがありません。お客様の身体にタッチした瞬間に求めていることを理解し、それに合わせて手技をすべて変えていくんです。
ですから同じお客様が定期的に通われても、毎回使う物や手技が異なります。これは他店にはない「chaleur+」だけのサービスです。
――他にも、「chaleur+」ならではのサービスはあるのでしょうか?
浅川 もともとオイルによる施術を主体としていましたが、なかにはオイルが苦手なお客様もいます。また、リラックスとかリンパマッサージよりも、例えば五十肩などでじっくり解してほしいなど、腰痛や肩こりのある方が思っていた以上に多いことに気付いたんです。
そこで、4月からあん摩指圧マッサージ師である姪がスタッフとして入ったこともあり、現在は姪が指圧で解した後に私がオイルで流したり、フェイシャルを行ったりするスタイルも行っています。
治療とリラックスを合わせて相乗効果が期待でき、ここ最近はとても人気です。整骨院などへ治療に通っている方が通ってくれたり、これまでオイルで通っていた方々が指圧による根本改善のため切り替えたり、メニューの幅も広がりました。
これまでのお客様はもちろん大切にしながら、今後そうしたスタイルを増やしていきたいと思っています。
技術だけでなく、
お客様への心遣いが強い信頼関係を築く
――浅川さんは、エステ業界でゴッドハンドと呼ばれていますが、どのような点が違うのでしょうか?
浅川 例えばフェイシャルとボディで、いずれかに得手不得手というものがあります。しかし私の場合、エステでフェイシャルを、ホテルスパではボディ系を鍛えられたので、どちらかが不得手ということはありません。
また、もともと人が大好きで、お客様ともっとも良い距離感で26年間にわたり取り組んできました。正直、疲れるときもありますが、手を抜いたことは一度もありません。せっかく時間を作って来てくださったお客様には、絶対に満足して帰っていただきたいですから。そういうセラピストの気持ちは、手を通じて伝わるものだと思います。
ですから単純に技術が上手いということではなく、そういった意識の部分も関係しているのではないでしょうか。ちょっと生意気かもしれませんが、これだけお客様にくまなくサービスを提供してきたことが、ゴッドハンドと呼ばれる所以かなと思います。

お客様の悩みやコンディションに合わせて、
浅川さんのゴッドハンドで施術してくれます
――お店のコンセプトと同様、技術だけでなくプラスアルファの要素が必要なんですね。
浅川 そうですね。これまでたくさんのセラピストやエステティシャンを見てきましたが、技術に特化した方は技術に走る傾向があります。技術を追求していくことは大事ですが、自分の技術にこだわりすぎてしまうと、お客様のニーズに合わせて柔軟に変えることができなくなってしまいます。
私はもともと化粧品が好きで、良いと言われているものは自分でも使ってみるんです。そうすると、技術だけでなく自分の経験を通じてお肌のアドバイスができ、その化粧品を試してみたいと思ってくださる方もいるんです。そういうことから、より強い信頼関係が築けてきたのではないでしょうか。技術によって気持ち良くなれるのは、当たり前のことですからね。
いかにお客様に喜んでいただくか、そしていろんなお客様の情報を得られるか、ということについては、常に意識しています。そういうちょっとした心遣いができるから、ゴッドハンドのように見えるのかもしれませんね。
――常にお客様のことを第一に考えているから、そういう心遣いが自然とできているんでしょうね。
浅川 お客様が来られたときに、表情やしぐさなど細かいところまで気にかけているので、「今日はこういうことを言ったら喜んでくださる」とか「こういう話し方かをしたら、来たときは違う表情でお帰りいただける」とか、なんか勘が働くんですよね。経験を積んだときに、いろんなところに目を向けたり、キャッチしていかないと、お客様とのズレが生じてくると思うんです。

「chaleur+」を象徴するフットリチュアル
※リチュアルとは、アジアの伝統に基づいた「儀式」のこと。
シャルールではフットバスサービスをトリートメントの始まりとしていて、おもてなしの意味が込められている。
芸能人や著名人も、
あくまで一人の大事なお客様として接する
――「chaleur+」は完全予約・紹介制にもかかわらず、すでに3カ月先まで予約が埋まっていると伺いましたが、集客方法について教えてください。
浅川 紹介制なので、オープン当初から媒体掲載などを使った集客は行っていません。私の中で、まずは1日お客様と向き合って施術したいという思いがありました。そのため、オープンのときに1日3組限定の完全紹介制サロンにしようと決めたんです。
その結果、少しずつ良いと思ったお客様が口コミで広めてくれたり紹介してくれたりと、お客様がお客様を呼んでくれました。
芸能人やモデルの方などもいらっしゃいますが、そういう方はお金を支払わずに招待されることが多いんですね。うちでも招待したことはありますが、ずっと招待するのではなく、今はご自身で予約をして通ってくださる方がたくさんいます。
著名人の方々がSNSに載せてくれたら一気に広まると思いますが、私はあえて載せないようにお願いしているんです。なかにはプライベートで通っているため教えたくないなど、勝手に他と差別化してくれているケースもあります。ここまでくるのに時間はかかりましたが、そうした積み重ねで広まってくれた感じですね。
――セレブから選ばれる秘訣や、そのために意識していることはありますか?
浅川 まず技術面では、他では受けられないものがあると自負しています。あとは空間としての心地よさや、お客様との距離感でしょうか。
しかし、こちらが気を遣って特別感を出すようなことはしません。あくまで普通に、他のお客様と同じように促します。化粧品も私が良いと思ったものはお勧めしますが、差し上げることはありません。良いものはきちんと購入して頂きたいと思っているので。紹介してもらった方からも、そういった姿勢がいいという意見を頂いています。
――最後に、今後の展望などについて教えてください。
浅川 まずは今のお客様を大切にしつつ、新しいスタッフにもたくさんの予約が入るようにしていきたいです。また、今後はさらにスタッフを増やして、今までにはない新しい技術やメニューを取り入れていきたいと思っています。
あとは、スクールは絶対にやりたいですし、オリジナルの化粧品を作りたいという考えもあります。スクールや化粧品が認知されていけば、自然とサロンの名前を知っていただけるようになると思います。
今までは隠れ家のようなイメージでしたが、少し間口を広げていきたいですね。

BEAUTY & SPA chaleur+(シャルール)
オーナーセラピスト
浅川 由美 さん
業界最大手にてエステティシャンとしてキャリアをスタート。
その手に惚れ込みリピーターが増え3か月先まで予約がとれないほど技術力は高く評価される。
さらなる技術の高みを目指し、世界屈指の高級ホテル「マンダリンオリエンタルホテル」のスパで、海外の要人やセレブリティを数多く担当。その後、国内でのセラピストとしての地位を本質的に向上させるべく、そのスキルを「伝える」職に就く。
海外スパブランドのインストラクターとして後進の育成に尽力。
22年のキャリアを経て、2016年春、顧客からの要望も高かった自身のサロン「BEAUTY & SPA chaleur+」をオープン。
BEAUTY & SPA chaleur+(シャルール)
住所:東京都港区南青山4丁目
※プライベートサロンのため住所非公開
【営業時間】
平日11時~20時、土日祝10時~19時 不定休
完全予約・紹介制
ご予約受付:03-6886-2252
http://www.chaleur0808.com/
撮影:坂本 康太郎
ビノタネについて詳しく知りたい方
お問い合わせはコチラ